喫茶店が好き。
流行りのスイーツが話題のカフェやオシャレな通りにあるカフェ、写真映えするカラフルなカフェもいい。だけどあの、時代の流れに逆らうような佇まいと静かな空間がたまらなく落ち着く。
知らない街を歩くときには無意識に味わい深い喫茶店を探してしまう。
そんなあなたに知ってほしい喫茶店が、調布市つつじヶ丘にあります。
珈琲焙煎SAKAMOTO(さかもと)
京王線つつじヶ丘駅北口から歩いて2分。駅前からほんの少し離れたこの場所に、19年前からひっそりと佇む喫茶店【珈琲焙煎SAKAMOTO】があります。実はこのサカモトはコーヒーマニアの私、佐々木舞の散歩コースにあり、気になってはいたものの「また今度」「そのうち行ってみよう」という状態がかれこれ1年近く続いていた場所です。
そんな中、実はこのSAKAMOTOが知る人ぞ知る名店だということを知り、勇気を出して行ってみることに。
結果から言うと「なんでもっと早く行かなかったの!私のアホ!」でした。
Cafeじゃない。これぞ理想の喫茶店
入った瞬間、なんだか煙たい。そしてカラカラと聞きなれない音が。
音のする方へ目をやってみると、かなり年季の入ったアンティークなマシンが生の珈琲豆を焙煎しているところで、マシンからは良い香りとともに煙が出ていました。
奥のテーブルに座っている常連らしき男性は、煙に驚くことも手で払うそぶりもなく、静かに本を読んでいる。きっといつものことなんでしょう。この光景にいきなり心を鷲掴みにされる。なんだかエモい…。
煙はあっという間に消えたので、改めて店内を見渡してみました。
控えめに流れるJazz。
オレンジがかった暗めの照明。
懐かしさを感じるけれど清潔感があり洗練された内装。
手入れされたヒゲが渋いマスター。
お客さんぞれぞれが自分だけの時間を過ごす静かな空間。
完璧。まさに求めていた喫茶店でした。
歴史を感じる喫茶店の中
席に着くとまずは年季の入ったメニューを手に取ります。
さすが珈琲の種類は豊富。ひらがなで書かれた「ぷれみあむ」もいい味を出しています。
奇抜なインテリアや華やかな置物は一切ないけれど、隅にごちゃっと置かれた豆や珈琲器具が良い味を出しています。
お店の奥には本格的でこんなに大きな焙煎マシンも。
大きいといえばテーブルには実験装置さながらの大きな器具でダッチ珈琲(水出しコーヒー)が抽出されていたり。8時間かけて、じっくり抽出していくそうです。
お客さんがいたので写真は撮れませんでしたが、店内は広く、写真に写っている席以外にも大きなテーブル席が2つあります。
珈琲一筋48年のマスターが入れる至極の一杯
この道48年のマスターがこだわりの生豆を仕入れ、その日の気温や湿度をみながら丁寧に焙煎し、そして丁寧に淹れてくれる。
香りが高く、豆ごとの特徴が生かされた雑味のない味わいは、思わず「こんなに愛情込めて最大限に良さを引き出してもらえる珈琲豆は幸せだな。」なんて考えてしまうほど美味しい。
お客さんごとに違うカップとソーサーも喫茶店好きにはたまらない。
世界最高級の激レアコーヒー【コピルアク】が飲める
これは本当に驚きました。
世界最高級かつ、どこの国でもなかなかお目にかかることができないコピルアク(ルアックコーヒー)が他の珈琲と並んで普通に置いてありました。
コーヒーマニアの私は、世界60カ国以上でカフェ巡りをしてコーヒーを飲み歩くほどなのですが、コピルアクといえば世界のコーヒー好きの憧れ。
コピルアクとは、インドネシアのバリ島やジャワ島などの限られた島にしか生息しない【ジャコウネコ】という生き物のフンから作られたちょっと変わった珈琲豆。苦味は少なくあっさりした味わいの中に酸味を感じます。規格外の高級さはもちろん、とにかく希少なのでなかなか出会えない珈琲豆です。
私はどうしても飲みたくてバリ島まで飲みに行きましたが、コピルアクの生産地であるバリ島ですら、置いているカフェを探すのに苦労したほどです。最終的には見つけることができましたが、1杯が1泊のホテル代と同じでした……。
またイギリスの老舗カフェでは1杯1万円弱、日本のとある高級ホテルだと5,000円ほどするらしいです。
そんなコピルアクが置いてあるだけでも驚きなのに、たった1,500円で飲めるという。
もう信じられません。
ちなみに、日本でコピルアクを見たのはSAKAMOTOが初めてです。
しかも、コピルアクは希少がゆえに偽物や混ざり物が多く流通している中、サカモトにある豆は本物の証明書付きなのです。
マスターの絶妙な距離感
やはり喫茶店の醍醐味は、カフェでは見かけないマスターやママ。
ここSAKAMOTOのマスターは立派なヒゲをこさえ、シンプルなエプロンがよく似合い、滲み出る渋さがかっこいい。
そして接客が一流。美味しい珈琲だけじゃなく、居心地の良い最高の時間と空間を提供してくれます。
店に入って珈琲ができて飲み始めると、初めて話しかけられました。
それはこちら側が返事をするだけで完結するような単調な会話。
そのたった数回のキャッチボールで、私がおしゃべり好きとわかったのでしょう。
これまでのクールで渋いマスターから、ユーモアたっぷりの明るいマスターに。
私が旅好きだと知れば、旅の話を聞いてくれ、珈琲好きだといえば珈琲について程よく教えてくれ、逆に私に海外の珈琲豆について熱心に質問してくれる。それも絶妙な距離感とペースで。
最終的にはこんなに素敵な笑顔を見せてくれました。
私にとっては聞き上手なマスターでしたが、きっとある人にとってはしゃべり上手なマスターで、またある人にとっては無口でクールなマスターなのでしょう。
そうそう、別のテーブルのお客さんが電話のため席を立ちお店の外に出た時、マスターはさっとその席に行き、飲みかけの珈琲に蓋をして、お客さんが帰ってくるタイミングで蓋を取って何もなかったかのようにカウンターの中へ戻ってきました。
マスターは、席に戻り温かいままの珈琲を飲むお客さんの様子を確認するわけでもなくグラスを拭いていて、その様子を端から見て「あ、この喫茶店好きだ。」って強く思いましたね。そういうの、好き。
常連客が作る優しく落ち着いた空間
(常連さんたちが旅行に行くたびに買ってきては並べていく置物たち)
SAKAMOTOのお客さんの9割は常連さんだそうです。
だけど、よくある常連が集まるお店のイメージとは真逆。
一見さんが入りにくい内輪感は皆無で、それぞれが好きな時間にやってきてはお気に入りのいつもの席に座り、いつもの飲み物を頼み、いつものように本を読んだり音楽を聴いたり、ぼーっとしたりして過ごす。
そしてゆっくり珈琲を飲み、慣れた手つきでお会計を済ませて帰る。
常連さんたちの空気感がこの喫茶店のエモい雰囲気作りの一端を担っていると言っても過言じゃない。
店内には私以外にも何人もお客さんがいるのに、誰の存在も気にならない。ここに私一人しか存在していないようなゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができる。
初見で入ってここまでリラックスできる喫茶店は珍しい。
スイーツやフードメニューも絶品
もともと六本木の超有名老舗洋菓子、クローバーに26年勤めていたマスターが作るスイーツは絶品らしい。常連さんによると、あまりにも美味しいので、取引先への差し入れや実家に帰る時の手土産用によく買うのだそう。ちなみにこの話をしてくれた常連さんはコーヒー嫌いなんですって。雰囲気やマスターが気に入って通っているのでしょうね。
そして常連さんたちが席に着くなり注文していたホットサンドも気になるところ。
今回はランチを食べた後によってしまったので次回はお腹を減らしていこうと思います。
マニアの欲望を叶える隠れ家的喫茶店
静かにゆっくり時間が流れる店内、美味しい珈琲。
ドアを開けたらそこは、都会の喧騒とは切り離されたオアシスのような別世界。
喫茶店好きなら誰しもが「こんな喫茶店を探していた…。」と声を揃えて言ってしまうようなまさに理想の喫茶店SAKAMOTO。
つつじヶ丘に行くついでではなく、わざわざ訪れる価値は十分にあります。
ぜひお気に入りの本でも片手にどうぞ。
店舗情報・アクセス
住所 | 〒182-0006 東京都調布市西つつじケ丘3丁目26−12 |
電話番号 | 042-480-0451 |
最寄駅 | 京王線つつじヶ丘駅から徒歩2分 |
営業時間 | 10:00~20:00 |
定休日 | 月曜(第5月曜は営業) |
ウェブサイト | 珈琲焙煎SAKAMOTO |