小金井公園の一角に建てられた「江戸東京たてもの園」。そこには、江戸から続く歴史ある建物が数多く展示されている。今回は、江戸東京たてもの園の魅力やおすすめのスポットについて紹介しよう。
ゆるやかに流れる時間と歴史を感じる
江戸東京たてもの園は、墨田区にある「江戸東京博物館」の分館として建てられた施設だ。日本各地の「現地保存が難しい歴史的建造物」が移築され、貴重な文化遺産として保存、展示されている。
たてもの園は小金井公園の西側に建てられており、公園の自然と一緒に歴史的建造物を楽しめると評判だ。ぜひ、たてもの園を訪れる際には小金井公園も回ってみてほしい。
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緑も多い西ゾーン
江戸東京たてもの園は大きく3つのゾーンに分かれているため、今回はゾーンごとにおすすめスポットを紹介する。もちろん、今回取り上げる場所以外もそれぞれ価値の高いスポットなので、時間の許す限り1カ所ずつ回ってみてほしい。
それでは、まず西ゾーンを見ていこう。
奄美の高倉
その名前の通り、奄美大島にあった高床式の倉庫だ。高床式倉庫は「収納の位置を高くすることで、湿気やネズミなどの被害から保存物を守る」というアイディアで作られた倉庫を指している。
奄美の高床式倉庫は想像より収納位置がかなり高く、柱の作りも見事だった。小金井市の指定有形文化財にも指定されているため、ぜひ足を運んでみてほしい。
常盤台写真場
「写真場」という言葉は聞き慣れない人もいるかもしれないが、この建物もなかなか面白い工夫が凝らされている。
というのも、常盤台写真場は照明設備の充実していない頃に活躍していた写真場だ。建物の2階…写真撮影を行う場所には大きな窓があり、そこから安定して光を採れるようガラスがはめ込まれている。
現在は感染症の影響で中を細かく見ることはできなかったが、2階の窓は外からも見ることができる。建物そのものの面白い形や、窓の工夫は必見だ。
デ・ラランデ邸(武蔵野茶房)
1910年頃、ドイツ人の建築家「ゲオルグ・デ・ラランデ」が平屋建ての洋館を3階建てに増築したことで知られている建物だ。現在は1階が「武蔵野茶房」になっており、建物内の展示と合わせて飲食物を提供している。
飲み物のテイクアウト等も行っているため、展示と合わせて楽しんでみてはどうだろうか。
武蔵野茶房・営業時間
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庭園も楽しめるセンターゾーン
続いては、センターゾーンのおすすめスポットを見ていこう。東と西を繋ぐこのゾーンには、建造物だけでなく庭園も展示されている。感染症の影響で見学できない建造物もある中、庭園は変わらず見学できるためぜひ足を運んでみてほしい。
旧自証院霊屋
赤を基調とした外観で、目に止まりやすい建造物だ。東京都の指定有形文化財にも指定されているこの建物は、尾張藩の藩主徳川光友の正室「千代姫」がその母「お振の方」を供養するために立てた霊屋であるらしい。凝った外装と格式高い雰囲気で、独特の印象を与えている。センターゾーンの中でも、印象深い建物の1つだ。
伊達家の門
こちらは、小金井公園の敷地内からも見られる建造物だ。大正時代、旧宇和島藩伊達家が東京に建てた屋敷の表門で、大名屋敷の門を再現したような形をしている。門柱の上には伊達家の家紋もかけられており、門の隣には小さい和室が建っていた。
時代を感じる柱の手触り感なども合わせて、楽しんでみてほしい。
会水庵
会水庵は、茶人の山岸宗住(会水)が建てた茶室だ。現在茶室内に入ることはできないが、庭の様子だけでも見ごたえがあるためぜひ確認してみてほしい。
また、会水庵の奥には大きな庭園もある。計算して育てられたであろう庭の自然や、流れる水の音を楽しめる素敵な空間だ。ぜひ直接訪れて、目と耳でその魅力を感じてみてほしい。
下町の雰囲気を肌で感じる東ゾーン
最後に、たてもの園の中でも有名なスポットが複数ある東ゾーンを紹介しよう。東ゾーンの様子は、小金井公園の敷地内からも見ることができる。しかし、中からでしか分からない展示もあるため、ぜひ入場して見学してみてほしい。
万世橋交番と都電7500形
万世橋交番と都電7500形は、東ゾーンの広場に展示されている。万世橋交番に関しては、なんと神田の万世橋のふもとにあったものをそのままトレーラーで運んできたらしい。昔の形のまま保存された建造物ということで、有名なスポットの1つだ。
都電7500形は渋谷駅を起終点に走っていた電車で、交通量の急増とともに廃止されたものをたてもの園で保存している。現在の電車やバスと比較して鑑賞してみるのもおすすめだ。
天明家(農家)
現在の大田区にあたる鵜ノ木村にて、重職を務めていた天明家の農家だ。筆者はここの持つ空気感が非常に気に入り、しばらく一人でぼーっとしてしまった。
こちらは小金井市の指定有形文化財の1つで、中の展示物からも格式の高さを感じる。適度に音の響く室内では、自分の足音も柔らかく響いて面白い。ぜひ中に入って、雰囲気や音も楽しんでみてほしい。
下町中通り
そして、建造物の最も集中する下町中通り。醤油店や銭湯、文具屋など、明治から昭和にかけての雰囲気を楽しめる場所だ。建造物の間にはちょっとした空き地もあり、昔の子供たちの遊び場を想像できる。
個人的には、こちらの「丸二商店」の外観がおすすめだ。小さい銅板片を組み合わせて作られた外壁には、作り手の繊細なこだわりを感じる。昭和10年代を再現したという店内も合わせて、訪れてほしい。
たべもの処「蔵」では名物の武蔵野うどんも
先ほど紹介した下町中通りには、休憩所も設置されていた。休憩所の2階にはたべもの処「蔵」があり、こちらでは名物の武蔵野うどんを味わえる。
今回は、オーソドックスな武蔵野つけうどん(税込み650円)をいただいた。ほどよい太さでコシのあるうどんと、シンプルな味わいのつけ汁を存分に楽しむことができた。うどんの他にも、クッキー付きコーヒー(税込み360円)や笹大福(税込み310円)など、ちょっと一息つきたい時にぴったりの商品もある。たてもの園めぐりに疲れた時にも、おすすめのスポットだ。
伝統を感じられる各種イベントも開催
小金井市観光まちおこし協会より引用
他にも、たてもの園では様々なイベントが行われている。
例えば、各月に1~2回ごとに行われている「伝統工芸の実演」。歴史ある建物を受け継いでいくたてもの園だからこそ、歴史の長い「伝統工芸の文化継承」への意識も高いようだ。
展示室での展示も積極的に行っており、こちらでは武蔵野の歴史や世界遺産についてなど豊富なテーマを扱っている。
現在は感染症の影響でこれらのイベントも縮小されているが、安全に配慮しつつ参加を検討してみてはどうだろうか。
食べログより引用
ちなみに、たてもの園にはミュージアムショップとカフェも常設されている。ミュージアムショップには江戸東京たてもの園にまつわる本やグッズが発売されており、カフェでは飲み物などをいただくことができる。
入口に入ってすぐのところに設置されているため、おみやげを買いたい方などはぜひこちらに立ち寄ってみてほしい。
江戸東京たてもの園を訪れる際の注意点
最後に、江戸東京たてもの園を訪れる際の注意点を見ていこう。
まず、江戸東京たてもの園は入園料がかかる。以前はシルバーデーなどの無料入園日もあったのだが、現在は感染症対策でそういったサービスは休止になっている。
そのため以下の料金と公式サイトを確認した上で、訪問を検討してほしい。
個人 | 団体 (20名以上) | |
一般 | 400円 | 320円 |
65歳以上の方 | 200円 | 160円 |
大学生(専修・各種含む) | 320円 | 250円 |
高校生・中学生(都外) | 200円 | 160円 |
中学生(都内在学または在住)・小学生・未就学児 | 無 料 | 無 料 |
たてもの園では以下のようなコロナウイルス感染症対策を行っている。一部を引用で紹介するが、訪問する場合は公式サイトで詳細も確認してほしい。
【お客様へのお願い】
公式サイトより |
ちなみにたてもの園前には駐輪スペースがあるため、自転車で訪れる際はたてもの園前に駐輪して、車で訪れる際はこちらの「小金井公園来訪者向けの駐車場」を使用すると良いだろう。
まとめ
歴史ある建物や風景を楽しめる「江戸東京たてもの園」は、今回紹介した以外にも魅力的なスポットがたくさんある。家族や恋人と訪れたり、もちろん一人でゆったり回るのにもおすすめだ。ぜひ、連綿と続く「たてもの」の歴史をその目で確かめてみてほしい。
詳細情報・アクセス
住所 | 東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内) |
電話番号 | 042-388-3300(代表) |
最寄り駅 | JR中央線「武蔵小金井駅」もしくは「東小金井駅」もしくは西武新宿線「花小金井駅」。詳細はこちら |
営業時間 | 9:30~17:30(4~9月)、9:30~16:30(10~3月)。入園は閉園30分前まで |
定休日 | 毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、その翌日)と年末年始 |
公式サイト | https://www.tatemonoen.jp/ |