京王線仙川駅もしくはつつじヶ丘駅から徒歩10分。
湧き水を水源とした大きな池、生き生きとした草木、鳥や虫がなく声……。大都会東京にいることを思わず忘れそうになってしまうほど、ゆっくりとした時間が流れる森のような公園があります。
ここは文豪、武者小路実篤の理想郷。世界を飛び回った実篤が最期の地に選んだ場所で、現在はその素晴らしい景観と自然をそのままに「実篤公園」として一般公開されています。
また公園だけでなく、敷地内には実篤が晩年執筆活動をした邸宅があり、公園のすぐ横には実篤記念館があります。
武者小路実篤を知らなくてもぜひ訪れてほしいお散歩スポットです。ではまず、武者小路実篤とはどんな人物なのか簡単にご紹介します。
実はすごい。作家・武者小路実篤
明治時代から昭和の後半まで長きにわたり活躍した有名作家、武者小路実篤(むしゃこうじさねあつ)。
最近は舞台公演まで行われた大ヒットゲーム【文豪とアルケミスト】の人気キャラとしても登場し、若い世代からも注目されています。
ピカソから直々に手紙と画をプレゼントされる
アートや美術品に興味があり、ヨーロッパ各地の美術館を訪問していた武者小路実篤は、なんとピカソと知り合いで、ピカソから直々に絵画をプレゼントされています。しかも実篤の名前入りで!
ちなみに実篤は、ピカソだけではなく、マティス、ルオー、ドランとも会い、ルオーからは油絵「ピエロ」を直接購入しています。ピカソ以外の3人は同期で顔見知りだったとはいえ、これだけの歴史的画家たちと会談をしているのを想像しただけで胸が熱くなります!
白樺の創設者
明治時代に活躍した作家さんたちには「白樺派」と分けられる先生方がいますが、実篤は白樺を創設した張本人です。
ちなみに白樺とは文芸兼美術雑誌で、新たな時代を切り開こうと当時の上流階級の若者たちが文化活動として創刊しました。活動期間14年でしたが今でもその名は語り継がれています。そのトップが実篤です。
海外旅行大好き
実篤は当時では珍しく、ドイツ留学経験がある父の影響もあり、海外にとても興味を持ち特にヨーロッパではたくさんの国を訪問しています。
昭和時代に海外旅行に行く日本人はほとんどおらず、海外はまだまだ未知の世界だったため、実篤は出国前に遺書を書いています(原本は武者小路実篤武者小路実篤記念館に展示されています。)
ベルリンオリンピックの時には、取材でベルリンを訪れ、その様子を新聞記事にしました。
愛に生きた人間
実篤は、とても愛情深く愛を大切にした人でした。
代表作には愛について書いた「友情」「愛と死」などがあります。
清純な愛の美しさを書いた「愛と死」の直筆原稿には実篤が書きながら流した涙の跡も残っています。
ヨーロッパ滞在中は奥さん宛に、当時はものすごく珍しいエアメールをわざわざ送ったりと、愛にあふれる人でした。
武者小路実篤記念館
大変失礼ですが「どうしてこんな所に、これほど貴重なものが沢山あるの!?」と、とても驚きました。
これまで実篤が書いた記事のコピーや作品の複製だけではなく、実篤が書いた遺書、旅行記、奥様への手紙、友人への手紙、執筆原稿、ピカソに書いたお礼状の下書きなどなど原本が展示されています!!
これほど多くの昔の文章が見れるだけでテンションが上がるのに、実篤の文章は手書きで見づらいことを除けば私たちでも読むことができます。歴史的文章は言葉が難しかったり素人の解読には程遠いものが多いので、実際に自分の目で見て読み取ることが出来るというのが何より興奮できる要素なのだと思います。手紙どころか手書きをする機会が激減している昨今で改めて自分の手で書くことの温かさを感じることが出来ます。
そして一番の驚きは、ピカソが実篤に送った絵画も展示されていたこと。入場料大人200円でこんな贅沢な時間を過ごせるなんて思いもしませんでした。
きっと、実篤のことを知らなくても楽しめますよ。(私は実篤が誰かさえ知らずにふらっと立ち寄ってめちゃくちゃ楽しめました。)
入場無料の実篤公園
実篤公園は、実篤が小さい頃から持っていた「水のあるところに住みたい」という夢を叶えた場所で、昭和30年から亡くなる昭和51年まで過ごしました。
実篤記念館のすぐ横に入り口があり、綺麗に手入れされているにも関わらず入場は無料です。
都内で湧き水!美しい池と青々とした木々
5,000平方メートルの広い敷地には、緑がいっぱい!
桜、椿、紅葉など四季を楽しめる木々や、数え切れないほどの草木が生き生きと生い茂っています。
また、湧き水を水源とした立派な池も2つあり、鯉が気持ちよさそうにゆらゆら泳いでいます。
竹林は木漏れ日がとっても綺麗で、歩くだけでなんだか浄化されているような気分になり、気持ち良い!
野鳥も沢山いるようで、野鳥観察に訪れる人もいるそうですよ。
実篤が数々の作品を執筆した旧実篤邸(登録有形文化財)
実篤公園には旧実篤邸があり、晴れた日の土曜日、日曜日、祝日には内部公開されます。
入場料は無料!
邸宅内は撮影禁止ですが、隅から隅まで見学できます。
とても綺麗な状態で保存されているので、つい昨日まで実篤がここで執筆していたかのような錯覚をしてしまいます。
リビングは一面ガラス張りになっていて、柔らかな光がキラキラ差し込み、外に目をやると青々とした木々や美しい池を眺めることができます。
実篤公園に行く前に準備すること
実篤公園は無料で誰でも気軽に入場できますが、持って行って欲しいものがいくつかあります。
- 飲み物 敷地内では自販機やおみやげ以外の売店はありません。公園内は広く、段差や坂道も多いので飲み物は必須です。
- カメラ 写真が趣味ならぜひカメラを。公園内には、桜、椿、紅葉などの花木を始め多くの植物が生えていて、虫たちはもちろん野鳥もいます。特に秋の紅葉は鮮やかで美しいのできっと素敵な一枚が撮れますよ。
- 虫よけ 夏は驚くほど蚊が多く、常に動いていないと蚊が体のあちこちを刺され、散歩どころじゃなくなります。必ず虫除けを準備してください。
その他……バリアフリーではありません。舗装されていない細い道や階段、Uターンが厳しい細い道などが多いので車椅子やベビーカーでいくのはかなり厳しいかと思います。
これぞ穴場スポット!無料で楽しめる贅沢なお散歩
住宅街に突然現れる武者小路実篤記念館&実篤公園。
実篤公園と旧実篤邸は入場無料。記念館もたった200円で入場できます。
たっぷり太陽の光を浴びて、たくさんの緑に囲まれ、透き通った池で優雅に泳ぐ鯉を眺める。東京の喧騒を忘れ、ゆっくりとした時間を過ごせます。
武者小路実篤ファンはもちろんのこと、つつじヶ丘・仙川周辺でお散歩スポットを探している方におすすめです!
詳細・アクセス
住所 | 東京都調布市若葉町1-8-30 |
最寄駅 | 京王線仙川駅、つつじヶ丘駅から徒歩10分程度 |
ウェブサイト | http://www.mushakoji.org/index.html |
営業時間 | 9:00~17:00(記念館内 閲覧室は10:00~16:00) |
定休日 | 月曜日/12月29日〜1月3日 |
入場料 | 公園:無料 旧実篤邸:無料 武者小路実篤記念館:大人200円 子供100円 |